vendredi 12 novembre 2010

遠い昔の出会い


Science 328: 680, 2010


Il y a du Néandertal en nous
(われわれの中にはネアンデルタール人がいる)


これは今年5月7日のル・モンドにあった記事のタイトルである。
同じ週のScience誌の記事と併せて思い出してみたい。

ル・モンドでは、上の文章の後に、少なくともアフリカ人でなければ、と続く。その意味は後で明らかになる。もしアフリカ人でなければ、DNAの1-4%はネアンデルタール人 (Homo neanderthalensis) 由来だという。Science誌に発表されたのは、クロアチアの洞窟から出た4万年ほど前の3人の女性ネアンデルタール人の骨の解析結果である。

この研究は、ライプチッヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所のスヴァンテ・パーボ (Svante Pääbo) 博士が中心となり行われた。実は、パーボ博士はすでに現代人とネアンデルタール人との間に交わりはなかったと発表している。今回の結果は以前のものと矛盾することになる。

彼らはまず、今回のクロアチアの材料をスペイン、ドイツ、ロシアから見つかっているネアンデルタール人のDNAを比較して、それがネアンデルタール人に特徴なものであることを確かめている、それからチンパンジーのDNAとも比較し、どこがより古い遺伝子の変化であるのかを調べている。

古い材料を扱う時に問題になるのは、取り出された遺伝子の95%以上を占める微生物由来の夾雑物。それから現代人のDNAも混じっていたという。これはコンピュータ解析の方法を工夫することにより解決。それから、対照群としてどの現代人を採用するのかという問題がある。今回は、進化的にネアンデルタール人とは異なるとされているフランス人、中国人、パプア・ニューギニア人、南アフリカと西アフリカの2人の計5人を選び、解析した。結果は冒頭に示したように、 2人のアフリカ人を除いた現代人のDNAには1-4%ほどネアンデルタール人由来のものが見られる。絶滅した彼らから受け継いだDNA子がわれわれの中に入っていることが明らかにされた。

これまでの有力なシナリオはわれわれの祖先はアフリカの特定の場所で生まれ、そこから中東やヨーロッパに移動する過程で交わることもほとんどなくネアンデルタール人を絶滅していったというもの。さらに多くのアフリカ人が調べられ、両者の接触がなかったことが確実になれば、現代人の祖先がアフリカを出て、ヨーロッパやアジアに向かう前に交わったことになる。イスラエルのカルメル山の洞窟に現代人が10万年ほど前から住んでいて、おそらく8万年前には寒波に襲われたヨーロッパを逃れてネアンデルタール人がこの地に下りてきたと推定されている。今回の結果は、このような場所で両者が交わった可能性を想像させる。

進化の過程で、ネアンデルタール人とわれわれは27~44万年前のどこかで別の道を歩み始めたとされている。人間を特徴付けている遺伝子があるとすれば、両者の遺伝子を比較すれば何らかのヒントが得られるかもしれない。今回の研究では、調べた30億塩基の中で78塩基に置換が見られたというから、その割合は非常に小さい。しかし、その遺伝子の役割は重要であることが想像される。

例えば、創傷治癒、精子の鞭毛運動、皮膚・汗腺・毛根、さらに骨格形成などに関わる遺伝子に差が認められたり、2型糖尿病にも関連する遺伝子領域や認識に関わる遺伝子(人間で変異が見られるとダウン症候群、統合失調症、自閉症などになる)にも差異が認められたという。ただ、ここで明らかにされた変異が実際にどのような変化をもたらすのか、そしてその遺伝子の生理的な役割は現在のところ不明である。


このような背景を頭に入れて上の写真を見直すと、心躍るものがある。
このおじさんはその時一体どういう態度を示したのか。
その出会いの場に自分も立つことができれば・・・などという妄想が湧いていた。

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