dimanche 16 mars 2008

フランソワ・ダゴニェさんを聴く (1)


フランスの哲学者フランソワ・ダゴニェ(François Dagognet)さん。1924年、シャンパーニュ地方のラングル(Langres)生まれ。ダゴニェさんの対談本 Pour une philosophie de la maladie (Les Editions Textuel, 1996)(『病気の哲学のために』)を読む。

学校で勉強を始めたのは15歳からだが、リセにもちゃんと通っていなかったようだ。ご本人は当時のことをあまり語りたがらないという。18歳でディジョン(Dijon)に行き、6月から11月まで働き、それ以外の時間を哲学することに充てる。そしてソルボンヌへ行くが、1947年ストラスブール(Strasbourg)に行くチャンスが訪れる。そこで、『正常と病理』を書いた医学生物学の哲学者ジョルジュ・カンギレム (George Canguilhem, 1904-1995)の講義を聴いたのである。それが「生ける人間」についての知を深めるために医学を修める切っ掛けになる。

1950年代の10年は医学の中で過ごす。ディジョンで病理学を学んだのだが、周りにいたのが患者の声を聴くことを知っている医師達であった。彼らはフランス医療の伝統がそうであるように、病気、病人を取り巻く全体像を理解しようとしていたのである。ルネ・ラエンネック(René Laennec, 1781-1826)からルネ・ルリッシェ(René Leriche, 1879-1955)に至る伝統である。その本質は、ヒューマニズムに基づく個人に応じた責任ある医療であり、個人の尊厳を尊重し、治癒に至る方法に慎重である医療である。

ダゴニェは「空」の中で考える哲学者ではない。病気について考えるのではなく、病気から考えるのである。病人の経験を無視する医科学はない、という姿勢がそこにある。





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