科学・医学・哲学を巡って
Autour de la science, de la médecine et de la philosophie
mardi 22 octobre 2013
利根川進博士の文章を読んで
日本経済新聞に
利根川進
博士が履歴書を書いていることを知った
コピーを送っていただいている方がいるからである
その文章を読み、これまでに感じたことのない新鮮な驚きを覚えた
それは、簡潔で単に事実を語るだけのものだということである
文章の背後にほとんど何の余韻も感じないほどである
まさに、科学の特徴を表しているように見える
そこで問題になるのは事実が重要かどうかで、その表現は二の次になる
ジャコブ
や
モノー
のように哲学的思考に進むのかどうかは、科学者の資質に掛かっているのだろう
哲学の文章を長い間読んできたためだと思うが、驚きの発見であった
jeudi 17 octobre 2013
ジャン・ドイチュ博士の考える遺伝子
Pr. Jean Deutsch (UPMC, Paris 6)
今日は、午後から遺伝子の概念の変遷についてのセミナーを聴きに出掛ける
演者はピエール・マリー・キュリー大学名誉教授のジャン・ドイチュ氏で、専門は遺伝学
昨年、上のスライドにある本を出されている
Le gène : Un concept en évolution
(Seuil, 2012)
この本では遺伝学の歴史を最初から辿っているが、今日はここ半世紀位に絞って話をされていた
簡単にまとめると、次のようになるだろうか
当初は、タンパクに翻訳される塩基配列の特定の断片を遺伝子と言っていた
しかし、それだけでは遺伝子の働きのすべてをカバーできなくなる
塩基配列とそれを取り巻く環境が重要になる
タンパクに翻訳されないイントロンと言われる存在が明らかになる
さらに、時間的、空間的要素も遺伝子の活性化に重要な役割を担っていることもわかってくる
このような状況を考え、これらすべての要素をまとめて遺伝子と定義したいとのお話であった
ただ、その名前を
パンゲン
(
pangene
)としていたのには、少し引っかかった
お話が終わった後、次のようなサジェスチョンをさせていただいた
この言葉は
ダーウィン
や
ユーゴー・ド・フリース
がすでに使い、歴史的に汚れているのではないか
カビの生えていない新しい言葉を充てた方がよいのではないか
この点は充分に認識されていて、敢えて使ったとのことではあったが、再考されるような印象を持った
mercredi 16 octobre 2013
ジャック・デリダさんを初めて聴く
ジャック・デリダ
さんを初めて聴く
文章を書くこととそれについての見方を語っている
目覚めて書いている時と半分眠って書いていることを振り返っている時との感情に違いがあるという
書いている時には感じない恐怖の感情が振り返る時に襲うようだ
それからアメリカとの違いについても語っている
その感じはよく分かる
今回初めて聴いたが、話していることや話し方には抵抗がない
長いが、ドキュメンタリーが面白い
しかし、彼によれば、それは単なるアネクドートにしか過ぎないのだろう
自らの人生は語るべきではないという
ハイデッガーはアリストテレスについてこう言ったという
生まれ、考え、そして死んだ
哲学者の生はそれで終わり
アングロサクソンとの対話になるので、思考の枠組みが違うことがはっきりする
問題にしているところも、どう問題にするのかも違う
英語の世界から見ていると、どこが面白いのかわからないということになりかねない
二つの世界は、なかなか噛み合わないというのが全体の印象だろうか
dimanche 13 octobre 2013
パリから見えるこの世界 (9) 「ルドヴィク・フレックという辺境の哲学的医学者と科学社会学」
雑誌 「医学のあゆみ」 に連載中の 「パリから見えるこの世界」 の第9回エッセイを紹介いたします
ルドヴィク・フレックという辺境の哲学的医学者と科学社会学
医学のあゆみ(
2012.10.13
) 243 (2): 203-206, 2012
ご一読、ご批判いただければ幸いです
samedi 12 octobre 2013
科学史の存在理由を問う
存在理由を問うことは、人間をはじめとしてあらゆることに求められるべきだろう
科学の歴史についてもいろいろな説明がされている
最近、オーフス大学の歴史家
Helge Kragh
さんの考えに触れる機会があった
彼は6つの理由を挙げている
その第一は、科学史は科学哲学にとって必須である
哲学をする前提としての実証的な部分を構成するというのである
第二は、その教育的重要性である
科学を教える時、その歴史を教えることが一つの有効は方法になると考えるからである
第三には、文系と理系という二つの文化を繋ぐものとしての役割である
第四は、特に第二次大戦後、科学研究の有用性を強調するために重要になってきた
それは政治的な理由と言ってもよいものだが、反対に科学研究を監視する上でも重要になるだろう
第五は、科学研究そのものにとって有用なことである
新しい道を拓くというだけではなく、科学知に対して批判的な目を向ける上でも重要になる
そして第六は、過去の科学知がそれだけで興味深いものであるということである
それは今はほとんど役立たない知であることがほとんどであるが、それにも拘らずである
これらの理由は、他の領域を考える上でも重なる部分が多いように見える
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