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samedi 18 juillet 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 37

WHOは7月6日を最後に国別のH1N1感染者、死亡者の発表を取りやめたようだ。7月16日のメッセージには最新の情報があるので、簡単に紹介したい。

現時点では、今回のパンデミックがさらに進展することは避けられないと考えられる。これまでのインフルエンザ・ウィルスによるパンデミックでは6か月かかって拡散したが、今回はわずか6週間という短さであった。

感染者が増えている国では、個々のケースをモニターすることが難しくなっているが、それはパンデミックの危険性を見て行く上でそれほど重要ではなくなっている。

今回のパンデミックの現在までの特徴は、症状が軽く、大部分の患者は症状が出てから1週間以内に、時に治療を受けなくとも回復することである。しかし、重症例が群発する場合などの異常には目を光らせて行かなければならない。他の注意すべきシグナルとして、学校や職場での不在の増加や緊急外来の増加などがあげられる。症例の発見に力を入れるやり方は検査現場に大きな負担となり、重症例や異常例のモニターが手薄になる危険性がある。

lundi 15 juin 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 36

世界の状況
6月15日、GMT 17:00現在
WHO report


世界の76国で35,928例、死亡163例 ← 66国で19,273例、死亡117例 (6月3日)

Japan (605) ← (385)

USA (17,855; 死亡45) ← (10,053; 死亡17)
Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
Mexico (6,241; 死亡108) ← (5,029; 死亡97)
Canada (2,978; 死亡4) ← (1,530; 死亡2)
Costa Rica (104; 死亡1) ← (50; 死亡1)

Chile (1,694; 死亡2)
Columbia (42; 死亡1)
Dominican Republic (93; 死亡1)
Guatemala (119; 死亡1)

mercredi 27 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 34 熱帯地方に要注意

世界の状況
5月27日、GMT 06:00現在
WHO map

世界の48国で13,398例、死亡95例 ← 46ヶ国で12,515例、死亡91例 (5月25日)
Japan (360) ← (345)


最新の Nature 誌に、これから注意を向ける必要があるのは、インフルエンザが絶えず発症し管理も行き届いていない熱帯地方であるとの記事が出ていたので紹介したい。

Swine flu attention turns to the tropics. Nature 459, 490-491, 2009

現在のところ、大半の感染者は北半球に分布しているが、これから南半球で広がり、そこでウイルスが変異する可能性が危惧されている。しかし、忘れてならないのは熱帯地方で何が起こるかなのだ、と指摘する専門家がいる。特に、東南アジアでは子供、鶏、アヒルや水鳥のインフルエンザ・ウイルスがあり、いつ新たなウイルスが出ないとも限らない。これから必要になるのは一にも二にも監視体制になるが、単に北半球や南半球だけではなく、熱帯地方にも目をやる必要がある。問題は以前よりは良くなっているとはいえ、富める国と貧しい国の間の監視体制には大きな差がある。WHO 事務局長チャンは、開発途上にある国を守るためにわれわれが協力して全力を傾けることこそ求められていると語っている。


vendredi 22 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 30 「1918年の過ちを避ける」

昨日の Nature 誌に 「1918年の過ちを避ける」 というエッセイが出ていた。当時の状況を知る上でも、そこから何が教訓になるのかを探る上でも参考になるので紹介したい。

今回のようなパンデミックで問題になるのは、第一に治療に必要となるワクチン、第二には情報の処理、コミュニケーションである。これは一般市民とのコミュニケーションのみならず担当者間のコミュニケーションを含んでいる。その意味で1918年のアメリカでの対応は避けるべき事例として研究の価値がある。

パンデミックは1918年1月に始まり、世界で350万人とも1億人とも言われる犠牲者を出して1920年6月に終わった。これは全人口の1.9%-5.5%に当たる。犠牲者の特徴は、25-45歳の働き盛りの成人で、この集団での死亡率は約10人に1人であった。

アメリカでは1918年春から散見されたが、軍の施設を除いては見過ごされていた。第1次大戦の戦場になっていたヨーロッパではスイスの兵士が犠牲になり表面化し、8月3日にはペストのパンデミックに相当するのではないかとの機密情報がアメリカに届いていた。

アメリカ政府はこの情報処理に当たって、戦況を知らせる際に用いる方針を採用したのである。すなわち、事に当たっては真偽は問題ではなく、士気にどのような影響を与えるのかが最も重要であるというものであった。優れたジャーナリストとして名の通っていたウォルター・リップマンはウッドロー・ウィルソン大統領に、一般大衆は精神的に子供なので("mentally children")命令に従うように諭すこと、という書簡を送っている。1917年、このメッセージを受け取った翌日にウィルソン大統領は士気を高めるためにすべての情報を管理するという方針を決定することになる。

その結果、1918年9月に致死的なパンデミックがアメリカを襲った時には、大統領は何の警告も出さなかった。政府の公衆衛生最高責任者が、適切な注意をしていれば特に問題はないとの声明を出したが、これが過度な心配は病気よりも危険だという掛け声になり広まっていく。そして、この病気は新しい名前を付けた古いどこにでもある風邪なのだ、とのメッセージに固定化されて行った。

しかし、実際には全く症状が違い、初期にはコレラ、チフス、デング熱などと誤診されていた。症状が出て1日で亡くなる人もあり、口や鼻のみならず目や耳からの出血という凄まじいものであった。にもかかわらず、政府や新聞は何でもない病気として片づけていた。公衆衛生責任者も情報を隠蔽するという態度を採り続けた。ここではフィラデルフィアの公衆衛生責任者の例が紹介されているが、1日の死者が200人を越えた時にはそのピークを迎えたと言い、300人になると最大を記録したとし、最終的には1日に759人の死者を数えるところまで至ったのである。そして、新聞は責任者の責任を追及することはなかった。このような情報処理は例外ではなく、アメリカ全土で行われていた。

嘘と沈黙は、当局の信用と信頼性を失わせる。その結果、人々が頼るのは当てにならない噂話になり、それに基づいた根拠のない想像になる。相互の接触を拒否するようになり、人間関係を損ない、病気になるのを恐れて家に閉じこもるようになる。その結果、社会活動にも大きな影響が出てくる。当時、ミシガン大学の医学部長は、このような状態が続けば地上から文明が消滅するだろう、と発言していたという。

当時と現在とでは状況は違うが、コミュニケーションが重要であることだけは変わっていない。ワクチンができるまでは、感染が広がり続ける可能性が高い。政府の責任者は真実を公開することが求められている。今回の感染については比較的うまく処理されているが、最近の例では必ずしも透明性が保たれているとは言えない。2003年、中国でのSARSは最初隠蔽されたし、2004年、タイとインドネシアの鳥インフルエンザも情報が秘匿された。

アメリカではパンデミックの際に透明性を高める方針が確立され、オバマ大統領もよく対応している。真実が隠されているのではないかという疑念が持たれるような沈黙も問題になる。1918年の噂話のように、あらゆる憶測がネットを駆け巡る可能性があるからだ。真実(情報)を管理するという発想ではなく、それは語られなければならないという姿勢が大切だろう。そうすることにより、疑心暗鬼に陥ることなく、われわれを具体的な方策に向かわせると考えるからだ。

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John M. Barry. Pandemics: avoiding the mistakes of 1918. Nature 459, 324-325, 2009

mercredi 20 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 28 日本文化との関連 

今回の感染とその後の対応を見ているとお国柄が現れる。医学の問題が文化によって大きく修飾されているのがわかる。日本の状況について詳しく見ているわけではないので遠くからの印象という程度にしか過ぎないが、私なりに見えてくるものがある。

第一には、基本にあるべき医学的、科学的な視点が薄弱であるということである。これは報道に見られる態度やそれに対する反応について日常的に経験していることだが、このような事態ではさらに強調されて見える。真の意味で、科学的な考え方がわれわれにまだ根付いていない証拠ではないかと思われる。あるいは、われわれのどこかに科学以外のところに価値を見出す文化的な習性があるのかもしれない。誤解を恐れずに言えば、科学的であることの意味など、どうでもよいと思っているとの疑いさえ生まれてくる。

第二には、某国の首相が上から目線と批判されていて、そのことに異存があるわけではないが、その目線は日本の政治から行政に至るあらゆる所に見られるということである。そこには最初から情報をコントロールするということが組み込まれていて、このような状況でさえ情報を政治的に利用することもありうるだろう。情報の公開に際して物々しさを感じさせるとすれば、そこには情報をコントロールしている意識がどこかにあるのではないだろうか。求められることは、あくまでも科学的で冷静な状況判断とその説明になるが、どの程度できているのだろうか。

第三には、上の二つの根にある問題で、個人の自律ということになる。これは自らの中に向けて問いかけることを繰り返す中で初めて生まれるもので、外の規範に合わせることを良しとする文化の中で生きている場合には、そこに辿り着くのは難しいのではないだろうか。しかし、この個人の自律的な生き方なくして科学的な精神が宿ることもなければ批判精神も生まれないだろう。そして、その精神なしには社会を内から変える力、ひいては新しいものを生み出す力は出てこないだろう。

以上がこれまで様子を遠くから見ていて現段階で浮かんできた感想になる。将来、医学の問題を社会的・文化的・哲学的に研究する分野の方が、今回の状況について研究成果を出されるものと思われる。どのような解析をされるのか期待したい。今回の感染はまだ継続中で、これからも予断を許さない状況が続くと予想される。折に触れて私なりに感想を綴ることがあるかもしれない。

lundi 18 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 25

5月18日、GMT 06:00現在

世界の40国で8829例、死亡74例 ← 39ヶ国で8480例、死亡72例 (5月17日)

Japan (125) ← (7)

Mexico (3103; 死亡68) ← (2895; 死亡66)
USA (4714; 死亡4)
Canada (496; 死亡1)
Costa Rica (9; 死亡1)

Argentina (1)
Australia (1)

Austria (1)
Belgium (5) ← (4)
Brazil (8)
China (6) ← (5)
Columbia (11)
Cuba (3)

Denmark (1)
Ecuador (1)
El Salvador (4)
Finland (2)
France (14)

Germany (14)

Guatemala (3)
India (1)
Ireland (1)
Israel (7)

Italy (9)
Malaysia (2)
Netherlands (3)
New Zealand (9)

Norway (2)
Panama (54)

Peru (1)
Poland (1)
Portugal (1)
Republic of Korea (3)
Spain (103)

Sweden (3)

Switzerland (1)
Thailand (2)
Turkey (2) ← (1)
UK (101) ← (82)

世界の状況
WHO
アメリカの状況
Centers for Disease Control and Prevention (CDC)

mardi 12 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 18 フランスでの予想

今日のル・モンドより。

レンヌの高等公衆衛生研究所 (Ecole des hautes études en santé publique: EHESP) の疫学者で所長の アントワーヌ・フラオ (Antoine Flahaut) 氏は、フランスの35%が感染することになり、その結果30,000人が亡くなる可能性があると発表した。

このシナリオによると、ピークは夏以降に来る。季節性インフルエンザの場合には、年に6,000人が亡くなっているという。これを聞いた健康大臣ロザリン・バシュロ氏は、France 3 で以下のように語った。

「それも一つの可能性でしょう。しかし、今は医学の専門家が将来の可能性について検討している最中です。これから冬を迎える南半球の状況を監視する必要があります。それによって、北半球が冬になる頃の状況を予想することができるでしょう」

フラオ氏はさらにこう語っている。

「今回の場合は 、SARS の時にように感染した人のすべてに症状が現れて入院することにはならないでしょう。感染者の半分は症状を出さないと思います。また、少なくとも4,000万人が亡くなった1918年のスペイン風邪の状況よりは、むしろ1968年の香港風邪と似た状況になると考えています。現在のところ、感染は外から入ってきたものだけですが、症状の出ていない国内の人から感染が広がるとしても驚きません。集団で見ると大きな脅威ですが、個人のレベルでは普通のインフルエンザと変わりありません」

「WHOは5月14日にワクチンについて発表するはずです。季節性インフルエンザで見られた北アメリカのH1N1株に対するものにするのか、パンデミックに対応したワクチンにするのか決めなければなりませんが、後者の開発にすべきでしょう。今回のウイルスは極めて競争力が強く、他の株を追い落としていくからです。1月には地上にはH1N1株しかなくなっているでしょう。各国は適切な対策を講じなければなりません。なぜなら全員に行き渡るワクチンはないからです」


L'épidémie de grippe A pourrait tuer 30 000 personnes en France (Le Monde, 12 mai 2009)

dimanche 10 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 15 1918年スペイン風邪ウイルスの同定

昨日、1918年のパンデミックについて触れた。世界の人口の1/3 が感染し、死者が1億人に上るとも言われる当時の状況について、"Flu: The Story of the Great Influenza Pandemic" の著者でもあるNYT の科学記者ジーナ・コラータ (Gina Kolata) 氏が語っている記事があったので紹介したい。そのウイルスがH1N1であることがわかるまでの興味深い話が出ている。


1918年にはウイルスは分離・同定されておらず、原因はわかりませんでした。犠牲者とともにウイルスも死んでしまうと考えるでしょうが、南北戦争の時にリンカーンが犠牲者の人体組織を永久に保管する巨大な貯蔵庫を作っていました。1990年代、米軍病理学研究所の研究者ジェフリー・タウベンバーガー (Jeffrey Taubenberger) が1918年のスペイン風邪の犠牲者の肺組織を調べることができないかと考え、1996年のある日、研究所でスペイン風邪犠牲者の2人の兵士の標本を見つけるのです。

これ以前の出来事ですが、1950年代にスウェーデンのヨハン・ハルティン (Johan Hultin) と彼の前妻がアラスカに旅行し、当時のすべて犠牲者が埋められている墓地があることを知ります。彼はその墓を掘り起こして、スペイン風邪について博士論文にまとめられないかと考えました。危険も顧みず卵でウイルスを増殖させようとしましたが何も起こらず、いずれ科学が進歩すれば誰かがやるだろうと考えていました。そして1997年、タウベンバーガーのグループによる Science 誌の報告を見ることになるのです。

それからハルティンはアラスカに戻り、材料をタウベンバーガーに送り、米軍兵士2人とアラスカの先住民族の女性の3人からウイルスを同定することになるのです。そこで全く同じ遺伝子配列とその他のウイルスが明らかになりました。

現在このウイルスはすでに死んでいるので、ここからの感染を心配する必要はありません。

1918年当時は交通機関も発達していなかったのに、どのように感染が広がったのかという点ですが、完全に隔離された場所でも感染が起こっています。アラスカの先住民族の場合がそうですが、すべての人が感染したにもかかわらず、成人の大半が亡くなっています。感染した郵便配達人が風邪を広めた可能性があります。当時は飛行機による旅行はありませんでしたが、第1次大戦で軍隊の移動がありました。現在の感染でもそうですが、なぜ感染が広がったのかについてよく分からないことがあります。記録が曖昧で、よいものがないのです。そのため死者が2500万人から1億人という幅を持っているわけです。特にアメリカの以外の状況はほとんどわかりません。

私がこの話を書いた動機ですが、スペイン風邪のウイルスが蘇ったことに興味を持ったからです。科学の素晴らしさを示すものだと思います。ここに、これまで裁かれなかった大量殺人の犯人がいたのです。それは科学的殺人ミステリーで、そこに探偵がいたのです。

現在の状況に恐怖を感じるかということですが、心配することは何の解決にもなりません。秋にスペイン風邪のようになって戻ってきた場合、ワクチンがあるでしょう。世界には新興性感染に対して素早く対応する能力があると思います。

この話を書くまではインフルエンザ・ワクチンを受けたことがありませんでしたが、「なぜそうしなかったのか、バカ者!」 と自らに言っていました。それ以来、年に一回受けています。この本の執筆により、ワクチンに対する考え方が変わりました。

皆さんは何でも風邪 (flu) と言って済ませ、季節性インフルエンザの深刻さが見過ごされているようにも思います。私の経験から言うと、頭痛、筋肉痛などの耐えられない痛みがあり、酷いものです。


Flu Lessons from 1918 (NYT, May 8, 2009)
Secret of the Dead: Killer Flu (Washington Post, November 22, 2005): タウベンバーガー氏についての記事

samedi 9 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 13 WHO事務局長マーガレット・チャン氏の評価

これまでの WHO の対応を評価する記事が NYT に出ていたので紹介したい。

4月29日の WHO の事務局長マーガレット・チャン (Margaret Chan) 氏の発表で世界は揺れたが、このところ CDC が学校の再開を推奨したり、ケーブル・ニュースでも大きく取り上げなくなり、落ち着いてきたかに見える。しかし、チャン氏はまだ警戒レベルを下げることは考えていないようだ。なぜなら、このレベルは致死率ではなく、地理的な広がりをもとにしているからだ。チャン氏のこれまでの対応は評価するものの、警戒レベルを致死率も考慮に入れてものに改変する必要を唱える者もいる。

チャン氏によると、今回の対応には2003年に香港で発生した SARS での経験が生かされているという。彼女はその現地責任者として事に当たった。2005年に行われた WHO による方針変更で事務局長は自ら警戒レベルを決定できるようになり、世界の公衆衛生分野で最も力のある人になった。

2006年にそのポストに就いたチャン氏は、運転もタイプも料理もしない。1947年香港に生まれ育ち、教師になる。1969年、将来夫になるデヴィッド・チャン氏がカナダの大学に行くと心配になった彼女は母親に相談、後を追うことにする。デヴィッドが医者を目指すことになると、彼女も医学を目指すことにする。小児科を学び、1978年香港の公衆衛生局に就職。1997年に発生した鳥インフルエンザに対応。140万羽の鳥を屠殺する決断をし、感染を終息させる。彼女はこれで注目を集める。

2003年の SARS 感染時には初期の対応に批判も出たが、総合的には支持された。この時の経験が今回の素早い対応になったと言われる。彼女は言う。今回のように新しい感染の場合には全体像を掴むのが難しく、常に謙虚でなければならない。この10日間の彼女の対応に対する評価は高い。


Managing a flu threat with seasoned urgency
(The New York Times, May 9, 2009)

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 12 「2009年は1918年とは違う」

今回と1918年のパンデミックの比較について、医学史、公衆衛生の専門家、Patrick Zylberman とのインタビューが昨日のル・モンドに出ていた。


今回の感染をどのように見ていますか?

最も興味深いのはメキシコでの死亡例が、若年者であることです。そのため小児や老人ではなく16歳から40歳までが標的となった1918年のパンデミックを思い出します。

二つの感染を比較するのは時代錯誤ではないでしょうか?

その通りです。2003年のSARS の時には、すべての医者、疫学者、公衆衛生の専門家はスペイン風邪の再来をホロコーストのように語りました。それは手をこまねいている政治家や市民に準備させるために強調する必要があったからです。

しかし、1918年と今回の状況は全く違います。ウイルスの病原性だけがパンデミックの指標ではありません。1918年とは違い、われわれはウイルスについての知識を持っています。抗ウイルス剤やワクチン製造が可能ですし、重症例を治療する抗生物質もあります。完全ではないかもしれませんが、疫学的監視システムが1995年以降出来上がっています。

われわれは1918年の経験から何を学びましたか?

1997年の鳥インフルエンザの際の香港当局の素晴らしい対応を見てください。数人が死亡した後に鳥の屠殺を決定しました。SARS の時は最初まごつきましたが、その後はアジアとカナダ政府が状況のコントロールに成功しました。

経験から学んだことは確かです。それが充分であるかどうかですが、2006年にロンドンの大学で行われた研究によると、フランスやイギリスなどの国は比較的準備ができているが、ヨーロッパ全般ではそうではないようです。

1918年当時の人はパンデミックに対する切迫感を持っていたのですか?

当局は完全に不意を突かれたのです。忘れてならないのは、まだ第一次大戦が続いていたことです。アメリカなどの戦地から離れた国では、まだ対処すべき相手を知りませんでした。ヨーロッパで4%、サモアでは20%にも達した死亡率をもたらしたものは、当局の対応のまずさになります。

1976年の例のように、当局の過剰な反応が感染そのものよりも深刻な被害を生むということになりませんか?

1976年のアメリカでの感染は、「全く起こらなかったこと」 になります。ニュー・ジャージーの軍基地で数例が見つかり、1918年の記憶が蘇りパニックになります。1920年以来アメリカにはなかったH1N1株による感染でした。フォード大統領は全国民にワクチンを指示することになりますが、ワクチンの事故とウィルスが消えたことにより2ヶ月後には中止になりました。ワクチンの指示は科学的と言うよりは感情的なものだったのです。

現在の衛生当局の対応は感情的でしょうか?

現在のWHO の対応が過剰だと批判する人がいますが、それは正しくありません。なぜなら、すべての政府は、WHO の指針により計画を立てているからです。2003年以来、感染やバイオテロリズムへの対応に関するすべての話し合いで大きな問題になるのが、WHO がその司令官であるべきか、ということです。ヨーロッパは好意的です。アメリカはやや好意的ですが、アジアはそれほどではありません。

前パンデミック状態がこれから感染が広がり始める貧しい国にどのようなインパクトを与えるでしょうか?

それは大きな不安です。秋に第二波が北半球を襲う場合、衛生状況がよくなく治療法もない国は富める国に比べ多くの被害を受けるでしょう。感染の伝搬を遅らせる手段として、10-20%の抗ウイルス剤を共有することが考えられます。世論が共有することに反対する可能性もあり、政治的には微妙でしょう。

危機管理のために公的な関心が生まれることは、われわれの社会の進化の指標でしょうか?

もちろんです。技術的なところから公的なところへの問題の移行は、素晴らしい進化と言えます。これも現在の社会が1918年とは全く違うという理由になります。転機は新興性の病気(特にエイズ)に対する懸念が生まれた1980年代や20世紀末の食料安全の危機でした。

メディアはどのような役割を果たしていますか?

メディアの役割は決定的で、政府もそのことをよく知っています。危機にあって、情報は抗ウイルス剤と同様に感染に対して抑制効果を持つ重要なものですが、管理が難しいものでもあります。予防的な報道はパニックを限定的にしますが、人々を受け身の状態から脱するように促すものでなければなりません。これは準備が最も遅れている領域のひとつになります。

それはなぜでしょうか?

政府が情報のコントロールを手放すのを嫌がることとメディアがこれらの問題をほとんど理論化していないからです。

"Grippe : 2009 n'est pas 1918" (Le Monde, 8 mai 2009)

jeudi 7 mai 2009

インフルエンザA (H1N1) (Grippe porcine; Swine flu) - 9 旅行に関する制限について

旅行制限に関して WHO が5月1日に出した声明をアップデイトして本日発表した。その要旨は以下の通りである。

旅行は安全か?

今回の件に関して、WHOは旅行制限することを推奨していない。今や世界では多くの人が仕事や余暇で世界を動いている。旅行制限しても感染の伝搬阻止にはほとんど役立たないどころか、世界のコミュニティにとって有害でさえある。

現在世界に感染が認められるので、感染を止めることよりは早期に発見して治療することに重点が置かれている。旅行者の症状を知ることにより感染を追跡することは役立ちはするが、その伝搬を減少させることはできない。なぜなら、症状が出る前に感染させてしまうからである。

数学モデルに基づく研究によると、旅行制限は感染伝搬の阻止には全く効果がないか、あっても限られたものにしか過ぎないという結果が出ていて、SARS の時にそれが確認されている。

WHO は旅行者の水際でのスクリーニングを推奨するか?

いいえ。それは効果があるとは考えないからです。しかし、その決断はそれぞれの国に委ねられています。そのような措置(入国や出国の拒否など)を取る場合、WHO に公衆衛生の面からその理論的根拠を報告しなければなりません。旅行者は常に尊厳と人権尊重を以って扱われなければなりません。

旅行時の注意事項は?

病気の場合には旅行を延期すること。帰国する場合には専門家に相談すること。日常生活でも行わなければなければならない一般的な予防処置により、自らと周囲の旅行者の感染を予防することができる。

samedi 2 mai 2009

豚インフルエンザ (Grippe porcine; Swine flu) - 3

昨日遅く、こちらの日本大使館から通報が入った。それによると、5月1日夜、国内で2名の感染者が確認され、感染が確認される可能性が極めて高いとされる1名とあわせ、3名がパリ市内に入院中。いずれもメキシコからの帰国者で国内での二次感染ではない。すべてが軽症で、抗インフルエンザ薬で治療中とのこと。仏保健大臣は、彼らに接触した者についての追跡作業を行うと発表。

ル・モンドにも関連記事があり、確認されたのは49歳と24歳の方。
世界の感染状況で下のWHOの発表と異なる国は (おそらく、こちらが新しい)、
Mexique :343
Canada : 41
Costa Rica : 2
France : 2
Pays-Bas : 1
Allemagne : 5
Grande-Bretagne : 10


今日のNYTから。

アメリカでの感染が、前日の11州109例から金曜の昨日は19州141例に増えている。それから、メキシコから上海経由で香港に入った25歳の旅行者が感染していることが判明。6年前に襲ったSARSの記憶が蘇っているという。アジアの密集した社会では一旦広がると手がつけられなくなる可能性があるので要注意だろう。

WHOによると、5月1日現在の世界の感染者は11カ国257例から、13カ国367例に増えている。内訳は以下の通り。

USA (141; 死亡1)
Mexico (156; 死亡9)
Austria (1)
Canada (34)
Germany (4)
Israel (2)
Netherlands (1)
New Zealand (4)
Spain (13)
Switzerland (1)
UK (8)

Hong Kong (1)
Denmark (1)

vendredi 1 mai 2009

豚インフルエンザ (Grippe porcine; Swine flu) -2

今朝、新型インフルエンザに関する通報がこちらの日本大使館から入っていた。それによると、WHOの警戒レベルが5になったこと、フランスでの現状は 「可能性が疑われる事例」 が32例(内2例は疑いが濃厚)であること、さらに関連情報をチェックするようにとの注意が添えられていた。


今日のNew York Times から。

WHOは、今回の感染を引き起こしているインフルエンザ・ウイルスの正式名をH1N1型と発表した。米国内の状況は、昨日(木曜)の段階で12州で114例が確認され、水曜の10州91例から徐々にではあるが拡大している。しかし、今後どのように進展するのかは明らかではない。

米国疾病予防管理センター(CDC)の責任者によると、警戒レベルを5に上げたWHOの判断に同意し、アメリカの準備は怠りがないとしている。また別の専門家の話として、今回メキシコで23か月の子供亡くなったことから直ちに今回のウイルスが危険であることにはならないとしている。アメリカでは毎年、36,000人がインフルエンザで死亡しており、その中にはそれまで健康だった75-150人の子供が含まれているという。

このウイルスの起源についてはまだ不明だが、これまでのウイルスより悪性という証拠はまだない。1918年, 1957年、1968年のパンデミックを起こしたウイルスに見られる遺伝子の変異は、今のところ見られていないという。

昨日ホワイト・ハウスは、オバマ政権の一員が4月中旬にメキシコに旅行した際にこの病気に罹っていたこと、妻と子供に感染したが現在は本人も回復し復職していること、さらに大統領とは接触していなかったことなどを明らかにした。

カナダでの感染が15例増え、計34例になった。
メキシコでの感染は312例で、うち12例が死亡している。


なお、以下のサイトで世界とアメリカの豚インフルエンザの発生状況がわかる。

世界の発生
WHO (OMS)

7月30日の状況:
11ヶ国が257例の報告をした。内訳は以下の通り。

USA (109; 死亡1)
Mexico (97; 死亡7)
Austria (1)
Canada (19)
Germany (3)
Israel (2)
Netherlands (1)
New Zealand (3)
Spain (13)
Switzerland (1)
UK (8)

アメリカの発生
Centers for Disease Control and Prevention (CDC)

jeudi 30 avril 2009

豚インフルエンザ (Grippe porcine; swine flu)


今日の Le Monde、New York Times から。

WHOの発表によると、ウイルスの伝搬は収まりを見せておらず、警告レベルを4から5へ上げた。最高が6で、世界的流行 (パンデミック)の状態を指すので、その前段階ということになる。各国に早急な対処を求めている。世界的に感染が確認されたのは148例で、死者は>10。症状は普通のインフルエンザと変わりないらしい。感染様式は呼吸器を介して人から人で、いずれの例も豚からの感染は確認されていない。しかし、ロシア、中国では豚の輸入を中止、エジプトでは当局が家畜の豚を殺す決定をしたため、当事者との間で悶着が起こっているようだ。WHOはまだ移動の禁止には踏み込んでいないが、フランスはメキシコへの飛行を中止するようにEUに要求している。

2500人ほどが感染(内、99例は感染確認)、168人の死者(8例は感染確認)を出しているメキシコでは、集会、商業活動の禁止、学校、美術館、ジム、映画館、レストランの閉鎖、サッカーゲーム観戦の禁止を打ち出し、これから始まる祝日には家に留まるよう求めている。ただ、警察署、銀行、空港、バス、地下鉄はそのままとのこと。

アメリカ(ヒューストン)では、23か月のメキシコからの子供が初めてこの病気で亡くなった。現在、10州で91例の感染が確認されている。火曜には5州64例だったので確実に増えている。大統領もテレビ演説で注意を呼び掛けたようだ。専門家はウイルスが新しいのでほとんどの人は免疫がないため、感染がこれからさらに広がると予想している。現段階の感染者の2/3は18歳以下で、学校は感染者がいる場合にだけ閉鎖するように指示されているが、これからより厳しい方策が取られるかも知れない。国境は感染防止効果が明らかでないとの理由で閉鎖されていないが、これに関してはマケイン、リーバーマン両上院議員が疑問を投げかけている。

カナダでは19例の感染。スイスでも初めての例が報告され、ドイツ、スペイン、イギリス、オーストリアに続いた。