lundi 20 août 2012

The New School のシンポジウム "Does Philosophy Still Matter?" を観る




37℃を超える日が続いている

暑気払いに、ニューヨークの The New School で行われたシンポジウムを観ることにした

「哲学にまだ意味はあるのか」
 "Does Philosophy Still Matter?"

The New School で教えているジェームズ・ミラーさん (James Miller)の本が出たのを記念しての昨年の会らしい

Examined Lives: From Socrates to Nietzsche (Farrar, Straus and Giroux, 2011)

実はこの本、今年の春、パリの英語本リブレリーで手に入れ、少しだけ読んでいたことを思い出す

予想もしなかった繋がりが現れ、この会が身近に感じられるようになる


他のパネリストは、以下の通り

サイモン・クリッチリーさん (Simon Critchley): The New School で教えている哲学者

アンソニー・ゴットリーブさん (Anthony Gottlieb): 元 The Economist 編集長、哲学の歴史に関する著作あり

The Dream of Reason: A History of Philosophy from the Greeks to the Renaissance (WW Norton, 2002)

アストラ・テーラーさん(Astra Taylor): スラヴォイ・ジジェクなどの現代哲学者のドキュメンタリーを制作

コーネル・ウェストさん (Cornel West): プリンストン大学で教える哲学者、活動家

モデレーターは元 Harper's Magazine 編集長のルイス・ラパムさん(Lewis Lapham


哲学をどう見るのかに関しては、特に驚くことはなかった

ただ、表現の仕方や問題の切り取り方には興味深く参考になることがあった

特に、コーネル・ウェストさんの切り口には面白いところがあった


改めて強調すべきは、哲学を専門家の中に閉じ込めておくのではなく、その意味を外に向けて広く語りかけること

ペーター・スローターダイクさんの言を俟つまでもなく、哲学にはその中に他者を誘う使命があるからでもある


もう一つ、不思議な繋がりが現れた

昨年6月、学会でニューヨークに滞在した折、その昔働いていた研究所を訪問した

Sentimental walk in Manhattan and talk with Dr. Hammerling (2011.6.20)

その時、ヘメリング博士の口からニューヨークにもThe New School という哲学のいいところがあると聞いていたのだ

こういう具合に過去が蘇ってくる時、いつものように少しだけ涼しい風が吹いてくるのを感じる




vendredi 17 août 2012

東京での二つの講演


9月の一時帰国では、9月11日、12日の 「科学から人間を考える」 試みの他、2つの講演が予定されている


ひとつは、東京で開かれる第36回日本神経心理学会

9月14日(金)夕方からの教育講演

演題は、「神経心理学を哲学する」 
"Philosophical problems in neuropsychology"

要 旨:
神経心理学の臨床を症状の記載に始まる器質的変化の同定とその修復を目指す学問であると定義すると、いくつかの哲学的問題が現れる。第一 に、症状の記載に関わる言語の問題。第二に、ある精神・心理症状から脳内の原因がわかるのかという相関性(correlation)と因果性 (causality)の問題。第三に、その精神活動は本当に特定された局所だけに因っているのか、他の領域の関与はないのかという部分と全体の問題。第四に、脳内の物質の物理・化学的変化から非物質である精神活動がどのようにして現れるのか、歴史的にはデカルトが明確に分けた空間を占める物質としての身体(延長実体)とそれとは重ならない非物質としての精神(思惟実体)がどのように影響し合っているのかを問う所謂「心身(心脳)問題」。第五に、対象者の症状のどこからを異常と見做すのかという正常と病理の間にある本質的な相違、および病気の治癒をどのように捉えるのかという問題。そして第六には、病気を契機として現れるそれまでの日常から乖離した新しい状況に人間がどのように関わっていくのかという人間と環境の問題などが考えられる。これらの古くて新しい問題は神経心理学が内包するだけではなく、医学全般にも当て嵌まる大きな広がりを持つもので、そこには人類の膨大な思索の跡が残されている。この発表では、それぞれの問題点を概観した後、心身(心脳)問題、正常と病理の問題、さらに人間と環境の関係をどう捉えるのかを中心に考察を進め、現場に身を置く皆様のご批判を仰ぎたい。

もうひとつは、9月13日(木)夕方からの国立感染症研究所における学友会セミナー

演題は、「なぜ科学に哲学が必要になるのか」
“Why is philosophy needed to science?”

要 旨:
古代ギリシャから17世紀に至るまで科学と哲学は不可分の関係にありました。その後、新たな方法を得た科学が哲学から自立する過程で、思弁だけを方法論とする哲学を科学から排除することになります。明治期の日本が西洋の科学を導入する際、国を興すために必要となる技術の導入には力を入れましたが、科学を生み出し支えてきた文化や精神的側面は見過ごされました。その傾向は第二次大戦から現在に至るまで続いています。昨年の3.11以降、日本の科学の惨状が白日の下に晒されましたが、その背景にもこの問題があるように見えます。この発表では、科学と哲学との関係を振り返りながら、科学をより十全なものにするために不可欠になる哲学的視点の重要性について考えます


この領域に入ってから、できるだけ多くの方に哲学的視点の重要性を知っていただきたいと思っている

ペーター・スローターダイクさんを俟つまでもなく、哲学にはその中へ他者を誘う使命があるからだ

偶の帰国は、そのための貴重な機会になっている




jeudi 16 août 2012

第3回 「科学から人間を考える」 試みのお知らせ (3)


第3回 「科学から人間を考える」 試みを以下の要領で開催いたします。

興味をお持ちの方の参加をお待ちしております。

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第3回 「科学から人間を考える」 試み
The Third Gathering SHE (Science & Human Existence)
テーマ: 「正常と病理を考える」
2012年9月11日(火)、12日(水) 18:20-20:00
いずれも同じ内容です 


今回は、われわれの人生において避けては通れない病気に関連した問題を取り上げます。個々の病気については学校で教えられていますが、そもそも病気とは?という問はそこから除外されています。病気をどのように捉えればよいのか。正常と病理との間に境界はあるのか。健康とは、あるいは病気が治るとはどのような状態を言うのか。いずれも大きな難しい問ですが、ここではこれらの問題を考え始めるための枠組みについて講師が40分ほど話した後、約1時間に亘って意見交換していただき、懇親会においても継続する予定です。このテーマに興味をお持ちの方の参加をお待ちしています。
 
会場: カルフール会議室 (定員約20名)
Carrefour

 東京都渋谷区恵比寿4-6-1 恵比寿MFビルB1
電話: 03-3445-5223


参加費 
一般 : 1,500円 (コーヒー/紅茶が付きます)
高校生・大学生: 無料 (飲み物代は別) 

会の終了後、懇親会を予定しています。

参加を希望される方は、希望日懇親会参加の有無を添えて
hide.yakura@orange.fr まで連絡いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


これまでの会のまとめは以下のサイトにあります。