日常に溺れた生活の中にいると、人間の世界にしか目がいかない
偶に時間を取って自然の中に入ると、違った世界が見えてくる
しかし、それは束の間のこと
すぐに元の世界に戻っていく
その視界から目に入るものは、人間世界の背景としか映らない
それ以前に、同じ種の他者に対してさえ、考えがなかなか及ばない
況や、そこに確かに生きている生物の生き様などは視野の外にある
仕事を離れ、忙しい日常から距離を取るようになると、少し状況が変わってくる
それまで背景にあった生き物が前面に出てくる
まず容易に目に入るようになるのは、植物だろう
樹木の1年の生活が見えてきたのは、退職2年ほど前から始めた昼休みの散策のお蔭である
それまで全く目に入っていなかった世界である
冬になると樹木が裸になる
その姿が美しい
どんな樹でも芸術作品である
そのことさえ、目に入っていなかった
そして、春になると少しずつ緑の葉が増えてくる
その緑が何と瑞々しいことか
素晴らしいその色に感動した
そして今、少しずつ植物の中で何が起こっているのかを知るようになる
これはすべて科学の成果による
そうすると、その精緻な動きに驚くことになる
マクロだけではなく、ミクロの世界においても
人間だけがそのようなメカニズムを持っているなどということは、到底言えなくなる
人間中心主義から離れること
そこには、われわれの精神世界を想像を超えるレベルで転換させる力がある
この世界がとんでもない精妙さで動いていることを、感じ始めることになる
生命を貫いているもの
それは一体何なのか