vendredi 26 février 2010

AAAS 2010 から: "One World - One Health"



2月18日~21日までカリフォルニアのサンディエゴであったアメリカ科学振興協会の年会に参加した。サブタイトルが "Bridging Science and Society" で、ある特定の分野に閉じこもるのではなく、その外との関係を探るお話をいくつか聞いた。この機会に簡単にまとめておきたい。

19日には "One health: Attaining optimal health for people, animals, and the environment" というセッションに参加。現代の健康問題はヒト、動物、環境(物理的、社会的)が不可分に絡み合っているので、それに対応したアプローチが必要になることが強調されていた。

CDCP (Center for Disease Control & Prevention) の Carol Rubin 博士は、まず "One Health" の概念が実は新しいものではなく、ルドルフ・ウィルヒョー (Rudolf Virchow, 13 October 1821 – 5 September 1902) の考えの中に見出すことができるとしている。彼はすべての細胞は細胞に由来する "omnis cellula e cellula" という細胞説を唱えた(細胞)病理学の大家であるが、人の病気と動物の病気との間に境界線はなく、また境界線を引くべきでもないと考えていた。そして、Zoonose (de., fr.) 人獣共通感染症 (en. zoonosis) という言葉を造っている。それだけではなく、ヒトの病気の予防のための食肉検査まで唱えている。それから近代医学の父と称されるカナダのウィリアム・オスラー (William Osler, July 12, 1849 – December 29, 1919) は、1870年代に医学部と獣医学部で教えていた。1890年代に入り、医学と獣医学が協力することにより cattle fever の原因となる Babesia bigiminia を発見したり、病気がマダニによって起こることを明らかにし、黄熱病を媒介する蚊の発見へと導く基礎を築いた。

20世紀に入ると医学は益々細分化され、ヒトと動物の病気も分断されることになる。その結果、医学部において人獣共通感染症が強調されることはなくなり、獣医学部もペット・動物の医学に変容していった。しかし、21世紀に入り、2004年9月には World Conservation Society がロックフェラー大学において地球における健康を分野を超えて総合的に見直そうとするシンポジウム "Building Interdisciplinary Bridges"を開き、12の原則 "12 Manhattan Principles" を発表する。その後、この運動は "One World - One Health (OWOH)" として現在も継続されている。

2009年にアフリカのペストがほぼゼロに激減したが、それは医学的な理由に因るのではなく、世界的な気候変動が媒介するノミなどに影響を及ぼした可能性が考えられ、病気の全体像を捉えるためには広い視点が求められる証左としていた。このようなアプローチをする上で重要になるが異分野間の協力であるが、そこで障害になっているのがお互いに敬意を払う姿勢の欠如であるという。これからの研究者は specialist であるだけでは不十分で、generalist の視点も併せ持たなければならないだろう。その上で、異なる領域の研究者と積極的に交わり、共同で事を進めることが求められる。



Dr. Carol Rubin (CDCP)



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