lundi 13 octobre 2008

アレックス・ローゼンバーグ氏で哲学と科学の接点を想う



新学期の最初の週が終った。ゆったりした日曜の朝である。昨日はデューク大学の科学哲学者アレックス・ローゼンバーグ氏(Alex Rosenberg)のセミナーを聞く。テーマは、発生遺伝学における還元主義の問題について。正式には、以下の通り。

"Five challenges to genocentrism in molecular developmental genetics"

まず言葉の定義から始った。

"genocentrism" (遺伝子中心主義):発生の説明を還元主義 (reductionism) で説明しようとすること。遺伝子が発生プログラムを規定し、そこで特別の役割を演じるとする見方。

"reductionism" (還元主義):生物学の説明が分子機構の詳細を明らかにすることにより改善され、その情報が加わるほどその完成度が増すとする考え方。還元主義と対するものとして、生物学には法則がない(メンデルの法則以外)とする考え、物質的基盤のはっきりしない欲望、信仰、魂などの存在を排除する eliminativism の否定、それにボトムアップ型の研究などをあげていた。

彼が指摘した遺伝子中心主義に対する挑戦は以下の5つになる。

1)Contra-induction
2) Anti-reductionism
3) Contra-genocentrism
4) Against the informational programming role of the genes
5) Replacing the univocal gene

発生のプログラムに細胞全体が不可欠であるとすれば、単純に遺伝子や分子だけで説明できるのか。脊椎動物の発生が蠅と同じではないはずである。遺伝子そのものの中には生物学的な情報までは入っていないのではないか(遺伝子産物が細胞の中でどのように振舞うのかまでの情報はないのではないか)。 epigenetic transmissionをどう捉えるのか。遺伝子以外の要素(環境など)が重要であるというholisticな立場が必要なのではないか。 natural selectionは還元主義にとって障害になるのではないか。自然選択は物理的な法則に基づく過程ではなく全く偶然に任されたものであり、物質主義者とは相容れないのではないか。

このような還元主義への疑問が出されているが、実際の科学の営みは最初に掲げた還元主義に深く根ざしていて、最早如何ともし難いものがあるかに見える。それ以外に科学の進む道はないかに見える。しかし、そこから全体の理解につながる視点が得られるだろうか。そして科学が全的理解に辿り着く新たな道を見つけることができるのだろうか。それが不可能であるとわかった時、科学と哲学の接点が見えてくるように思えるのだが、、。




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