昨年9月、神経心理学会で教育講演をする機会に恵まれた
このようなことが起こると、人生がどのように転ぶのか予想などできないことがわかる
学会ではいろいろなことを学ぶことができたが、その一つにネガティブ・ケイパビリティがある
わずか25歳でこの世を去った若者の言葉である
いろいろな解釈がありそうだが、不確実、不思議、未解決の状態を受容する能力とされているようだ
何だかわからない不安定な状態に居続ける能力である
これは科学で求められる能力とは対極にあり、哲学者に求められる能力のようにも見える
キーツはこの能力が芸術家、特に詩人に必要だと言っている
この世界の現象、人間の営みを一つの理論や概念に置き換えようとするのではなく、そのまま受け入れる柔軟性
即効性のある解を得て安心するのではなく、様子の見えない霧の中で耐える能力
この能力、以前に問題にした「先送り」とどこかで繋がっているようでもある
先送り - Esprit critique (2005-06-04)
「先送り」 再考 (2006-05-05)
「先送り」再々考 (2007-09-24)
キーツはシェークスピアに並外れたものを見ていたようだが、モンテーニュが持ち続けた能力とも通じる
モンテーニュ I-VIII (2007-09-15~2007-09-23)
そう言えば、エドガール・モランさんも対談『危機の時代にどう生きるか』の中でそんなことを語っていた
曖昧さに耐えること、そして理解することと判断することの峻別 (2011-05-31)
ウィキによれば、日本語訳として「消極的能力」、「消極的受容力」、「否定的能力」などがあるという
このいずれもが的を外しているのではないだろうか
Life mask of Keats by Benjamin Haydon, 1816
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