mardi 2 juin 2009

ジョージ・C・ウィリアムズという進化学者、あるいは統合への精神運動 George C. Williams, ou l'esprit synthétique


George Christopher Williams
(b. May 12, 1926)


最近、ナイルズ・エルドレッジ (Niles Eldredge, b. 1943) がこの方について語っているのを読む機会があった。エルドレッジは1972年にスティーヴン・ジェイ・グールド (Stephen Jay Gould, 1941-2002) とともに進化は漸進的に進むのではなく変化のない平衡状態に挟まれるようにしてある急激な変化の時期を経て起こるものとする断続平衡説 (Punctuated equilibrium; Équilibre ponctué) を提唱した古生物学者である。

エルドレッジ氏の話によると、イギリスの進化遺伝学者のジョン・メイナード・スミス (John Maynard Smith, 1920–2004) がウィリアムズがアメリカの科学アカデミー会員にもなっていないことに驚きを持っていたという(1993年には会員になったが)。エルドレッジ氏自身が1980年代にウィリアムズを訪ねた時には研究費が当たらないことを嘆いていて、信じられない思いを抱いたという。進化がグループにではなく個人、さらにはその遺伝子に対する選択を介して行われるという考えの持ち主で、リチャード・ドーキンス (Richard Dawkins, b. 1941) にも大きな影響を与え、性選択や老化に関しても重要な仕事をし、進化医学の理論的基盤も築いている。このように進化生物学に大きな足跡を残したウィリアムズへの評価の低さは驚くべきであるとしている。彼は照れ屋ではあるが、細心の注意をもって深く思索する人間であると正当に評価している。

これを読んだ時、いろいろな思いが巡っていた。これは私がアメリカにいた時のことになるが、彼が研究生活を送っているストーニー・ブルックには就職先の一つとしてインタビューに行ったことがあり、親しみとともに懐かしさが蘇っていた。それから生物学分野での理論的な仕事に対する評価の低さはアメリカでもあるのか、という思いが湧いていた。生物学と言えば実利に結びつく成果が求められ、それ故にそのような仕事がまず評価されるのは洋の東西を問わないのかも知れない。これに関連して思い出すのは、免疫応答の理論的基盤になっている "two-signal model" を1970年に提唱し、それを今も改変し続けているメルヴィン・コーン氏 (Melvin Cohn, b. 1922) が理論的な仕事に対する理解が低いことを漏らしていたことである。これらのことを目の前にして、統合に向かう精神運動に対する評価を考え直さなければならないのではないか、と考えていた。


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