samedi 20 mars 2010

アジア、そして世界における科学を考え直す時


新しく来た科学雑誌に目を通す。これまでアメリカで定期的に開かれている会議が海外でも開かれるようになっていることは知っていたが、アジアの場合には中国で開かれることが多くなっている。今回目に付いたのは Cold Spring Harbor Lab の会議だが、これからそのような機会が益々増えるのではないかという印象を持った。欧米の会議を日本でやる必要はないという考え方も理解できるし、日本にいるとそのような考えになるのは自らを振っても納得がいく。しかし、国際的な基準しかない科学のような世界では、外との日常的な接触が不可欠になるのではないだろうか。

日本の場合には世界を視野に入れた戦略的な思考が苦手で、世界に訴えかけるような姿勢に乏しい印象がある。島国の中に落ち着いてしまうとそういう視点を日常的に持つのが難しくなるのかもしれない。先月サンディエゴであったAAASの会議ではアジアの科学コミュニケーションの現状を扱ったセッションがあり、日本、中国、韓国の代表者が発表していたが、アジアの特徴は国が前面に出ていることだろうか。中国は国がすべてを決めている。科学を知らない農民が多いので、とは責任者の発言。それから韓国、そして日本の順に国の影響が少なくなるような印象を持った。アジアにおける国の関与の大きさにはアメリカの司会者も目を見張り、同じ科学とは言いながらここまでその姿が違うのかと驚いていた。

すべてを国がやる中国のスタイルがよいとは言えないだろうが、これから世界の中で生きていこうとする気概と戦略を持っているように感じた。大陸にある中国には日本人にはない世界の中の中国という感覚が自然に身に付いているのかもしれない。アメリカで活躍する中国人科学者の数も多く、彼らはアメリカ社会に積極的に入ろうとする姿勢が強い。人口においても圧倒する中国は科学の世界でも大国になりそうな予感がしている。その上で日本はどのような道を取るべきなのだろうか。それを考える際には単なる言葉の羅列ではなく、動きを伴った大胆さが求められるように思う。


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